言の葉の雨が降りしきる

V6を中心にアイドルのこととか色々綴る。エッセイもどきも書いたり。綺麗なものを言葉にしたい。

ミュージック・タウン

ある用事の帰り道。雨がざあざあと降りしきる夜だった。
いつも使っている屋外のエスカレーターが使えなくて、仕方なく隣接されたビルのなかに入る。ビル内のエスカレーターを上がり、再び外に出ると、壮大な弦楽器のメロディが耳に入ってきた。
ストリートライブだ。
私がたまに訪れるこの街は、音楽の街と呼ばれている。というか、そう自称している。自称するだけあって、駅の周りの至る所でストリートライブが行われているのだ。たいていはインディーズのミュージシャンによるものみたいだけど、たまに著名なアーティストのパフォーマンスの告知がされているのを見かける(残念ながらタイミングが合わず、実際に見られたことは殆どない)。
 
その日は雨だったから、流石にないだろうと思った。私がよく通りかかるその場所は屋根があるとは言え、殆ど屋外みたいなものだから、簡単に雨ざらしにされるのだ。
 そんな私の予想を嘲笑うかのように、演奏会が行われていた。いつもはまばらな観客も、その日はやけに多かった。ノリノリな音楽に合わせ、手拍子をしたり身体を揺らしたり。雨なんてものともせず、その空間はひとつになっていた。
 
美しい曲だった。
 
多分弦楽器の、ドラマチックでロマンチックなメロディ。音楽のことはまるで疎いのがわざわいしてうまく言葉にできないのがもどかしい。
帰りを急いでいた私はそこに留まることはできなかったけれど、もう少しだけ浸っていたくて、後ろ髪をひかれるように何度も振り返りながら通り過ぎた。
そして振り返ったときに、雨が見えた。
演奏者たちを雨から守るコンクリートの天井の、その上に降り注ぐ雨が、なにか照明の光に照らされて金色に輝いていた。
それはあまりにも美しい光景だった。夜の暗がりのなかで、決して多くはない照明の幻想的な光と、雨粒のシャワーのなかでひたすらに音楽を紡ぎ、またそれに浸る人々。
 
私はこの街の、音楽の街という呼び名があまり好きではなかった。正直、言うほど音楽にゆかりがあるようには思えなかったし、どうせ自称でしょ、なんて冷めた目で見ていた。
けれどその夜の光景は、まさしく音楽の街という名に相応しい姿だったに違いない。
次にこんな光景に立ち会えたら、今度こそ私も音楽を盛り上げる観客のひとりになりたい。そう思った。